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2013年5月25日 (土)

紫香楽の宮5(青もみじの季節に訪ねる、常楽寺と長寿寺)~白洲正子「近江山河抄」の舞台を歩く(22)

西寺(常楽寺)、本堂と三重塔
「彼[良弁]は近江の帰化人の子孫で、後に造東大寺司となり、石山寺も建立した。
 石山だけでなく、湖南の古い寺院は、ほとんど彼の創建による。(中略)
 が、なんといっても美しいのは、東寺(長寿寺)と西寺(常楽寺)であろう。」
 (『近江山河抄』より)


常楽寺三重塔
常楽寺本堂
常楽寺の本堂と三重塔。ともに国宝である。
阿星山(あぼしやま)の西にあって、「西寺」(にしでら)と呼ばれるのが常楽寺である。

無住職の時代が続いていたが、現在のご住職が木を切り、花を植え、遊歩道を整備された。
ご住職が赴任してきた時は、三重塔が木に隠れてどこにあるか分からない状態だったという。
※紅葉シーズン以外は、境内参拝にも予約が必要。

石部本陣跡の石碑(旧東海道)
東海道五十三次の51番目の宿場町・石部(いしべ)に、常楽寺と長寿寺はある。
石部町と甲西町の合併(平成16年10月)によって、現在は滋賀県湖南市になっている。
平成17年11月より湖南三山と称されることになったのが、常楽寺、長寿寺、善水寺である。
三山とも奈良時代に建立された天台宗寺院で、国宝を有し、紅葉の名所として知られる。

しかし、常楽寺と長寿寺は、善水寺とは歴史的・地理的に異なる顔をもつ。

長寿寺山門
常楽寺と長寿寺は、ともに紫香楽宮の鎮護寺として建てられた勅願寺である。
阿星山(あぼしやま)のふもとにあり、紫香楽宮の鬼門(北東)に位置する。

山号はともに「阿星山」(あぜいざん)で、良弁(ろうべん)によって開かれた寺である。
平安時代には「阿星山五千坊」と呼ばれるほど、栄えたという。

阿星山は金勝山を形成する山の一つで、金勝寺(滋賀県栗東市)の山続きにある。
以前ご紹介したとおり、金勝寺は、平城京の鎮護寺として奈良の鬼門に建てられた。
金勝寺は733年に良弁開基の寺で、8世紀までに興福寺(法相宗)の仏教道場となった。
しかしその後、比叡山(天台宗)の勢力が台頭し、奈良(興福寺)の影響力は消えていく。
金勝寺、常楽寺とも、平安時代後期までには天台宗に改宗している。

長寿寺本堂-1
長寿寺本堂-2
「ことに東寺のたたずまいは優雅である。楓と桜並木の参道を行くと、檜皮葺の屋根が見えて 来て、赤松林の中に鎮まる鎌倉時代の建築は、眺めているだけで心が休まる。」(『近江山河抄』より)

阿星山の東にあって「東寺」(ひがしでら)と呼ばれるのが、長寿寺である。
写真の本堂は国宝になっている。

長寿寺創建には、聖武天皇のこんなエピソードが伝わっている。
聖武天皇は、大仏造営のため紫香楽宮に遷都したが、世継ぎがなく良弁に祈請させた。
良弁は阿星山中の瀑布に籠もって祈ったところ、間もなく皇女が産まれた。
そこで天皇は東寺を建立し、皇女生誕にちなむ子安地蔵尊を行基に刻ませて本尊とした。
そして皇女の長寿を願い、長寿寺という寺号をおくったのが、寺の始まりという。

長寿寺の鐘楼
長寿寺は子宝・安産・長寿の寺であり、花の寺でもある。

ちなみにご本尊の子安地蔵尊は秘仏で、50年に一度開帳される。
その年がなんと、昨年(2012年)だったとのこと。うーん残念。長生きして伺うとするか。

長寿寺の石造多宝塔
長寿寺の石造多宝塔。聖武天皇の菩提を弔うために鎌倉時代に建立した多宝塔。
今は相輪が欠けているが、この種の石造多宝塔の遺例は極めて少ないという。

長寿寺本堂-3
青もみじの季節もまた美しいということで、二つの寺を訪ねたのが5月半ば。
車以外だと、石部駅からバス又はタクシーで参拝する人が多いらしいが、駅から歩いた。
※ハイキングコースになっており、湖南市観光協会が地図を配布されている。

あいにくの天気となってしまったが、雨の中を撮影させて頂き、お話を伺った。
長寿寺はご住職の奥様による法話が名物となっていて、心に残る話をして頂いた。
常楽寺は予約が必要で、ご住職に時間を作って頂いた。お二人に御礼申し上げます。

次回:紫香楽の宮6(正福寺と廃少菩提寺)に続きます。

↓地図:紫香楽宮との位置関係を御覧下さい。

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